ブルー・ウイング・ブリッツ
 
(2002.5.9)

フロントミッションの名を冠したゲームではないですが、どうやら「フロントミッションのスタッフが贈る空戦ファンタジックロマン」らしいので購入。とある資料には出荷本数2万本とありましたが、鳴かず飛ばずだったようで知名度も低く、このソフトを扱った個人サイトなども見かけません。世界観が再検証できるほど深い設定もないので、クリア後の印象を語ってみます。

ワンダースワン初体験でのドキドキもありつつ、プレイ開始となるわけですが、正直言ってクリアまでの道のりの長いこと長いこと。正味でいったら2週間くらいかと思いますが、途中で挫折もあり、エンディングにたどり着くまで2ヶ月以上経っていたような気がします。5段階評価とかやらずに白黒はっきりつけるとすれば×です。他人にはお勧めしない。

そういうわけで、良い面を全力で探しつつ、汚点先行でレビュー。

詳しいゲームシステムは公式サイトを読んでもらうとして、敵味方航空機が1つのエリアに最大2機ずつ、3ターンが1セットで攻防をするんですが、この戦闘時に敵機の被害状況がよくわからない。セオリー通り、大きなダメージを受けている瀕死の機を先に集中攻撃で撃破したいと思っても、敵機のダメージ状態の確認ができないのでどの機体を先の攻撃するかわからず、不利な戦闘を強いられてしまう。機体は機関部・主翼・尾翼・胴体部とパーツで構成されていて、主翼がダメージを受けると命中率と回避率が下がるという具合に、どこかの部位が一定のダメージを受けると性能が低下するはずなのですが、その実感がほとんどない。目視も伴わないので攻撃が成功したか否かわからずイライラが募る。

攻略本にはいろいろとウンチクと御託が並べられていて、さも奥深いゲームのように煽っていますけど、母船のディスカバリーがやられないようにして、各機が水平機動で積極的に攻撃を仕掛ければ何とかクリアできてしまう……気がします。ただ、ステージによってクリア条件が異なるのは、戦略/攻略法が一辺倒にならずに済むのでよい試み。

インメルマンターン、シャンデルと空中機動の“型”に則ったマニューバ(フロミでいうスキル)がいろいろあっても、どういう動きなのかまったくわからない。文字で“ヨー・ヨー”とか言われても説得力がなくてこちらの想像力にも訴えかけてこない。凝ったものでなくても動きで見せてくれたらかなり違うはず。WSでやるにはゲームコンセプトとしていい選択ではなかったのではとさえ思えてきます。逆にマニューバがうまく表現できていれば、視覚的・戦術的に面白いものに仕上がったのではないでしょうか。

シナリオは、大きな謎が提示されることもなく(あるにはありますが謎と呼んでいいのか)ステージが進めば紙芝居的に淡々とストーリーは進展していきまして、最後に「ああ、そうでしたか」と思わせて終わります。低い年齢層を意識してシンプルな構成にしたのだなと思わないと、伏線もどんでん返しもない理由が思いつきません。それと、ステージの間のストーリー場面が簡潔すぎるのでもっとドラマチックな脚色が欲しいです。登場人物も自警団、孤児、王子とその侍女、空軍パイロットとその妹など面白くできる要素があるのに、人物に沿った描写はほとんど見られない。いくら同じ目的を持つ仲間であったとしても、地位や境遇が違う人間が集まれば多少のいざこざが起こるはず。いや、少なくともゲームのシナリオとしては起こすべき。

目論見があったかどうか、フロントミッションに激似の効果音を使っていたりしているところに唯一「フロントミッションのスタッフが再結集してした」というフレーズが頭を過ぎりましたが、その程度。そうそう、公式サイトにあるムービーは、ゲームの完成度に関係なくいい出来なので、一度見てください。

この後に、WS版のフロントミッション(一作目)が移植、さらにPS版でUSNサイドを加えた1stが発売。ブルーウイングブリッツという単発でなく、外伝的でも良いからフロントミッションとして新ストーリーが出ていれば…。