すみません、そのヴァンツァーおいくらですか?
 
(2003.10.25)

― 予備知識 ―
厳密にいうとWAP=軍用、WAW=民間用。ヴァンツァーは本来、軍用であるWAPのみを指す語。オルタナティヴ以外では、この使い分けは明確ではない。WAPはWander Panzerの略で「歩く戦闘車両」の意味。MULS-P(MULS-Panzer)という軍用規格に則ったWAWがヴァンツァー(WAP)といえばわかりやすいだろうか。
では本題。


ほかの値段の分かる一般的なものと比較すればバシッと○○○円です!と言いきれるのだが、実はそうもいかない。一作目の『ミリタリーガイド』ではパラダイスバーガーが1.99ハフマンドルと明記され(実際には1.99とあるだけで単位はない)、ているが、この値段を基準に考えると、とてつもなく安い値段が出てくる。1.99ハフマンドルのパラダイスバーガーを199円として、1ハフマンドル=100円と仮定。すなわちゼニスは(340+160+260)×100で7万6000円となり、夏休みにバイトをがんばれば買えそうな値段ほど。ゼニスVは57万円。

仕方ないので概算をほかの方法で探る。あらかじめ断っておくが水素エンジンやジェネレーションバッテリーやアクチュエーターの妥当な価格など予想できないので、部品パーツの総計という、まどろこっしいやり方はしない。とりあえず民間作業用WAWを、世の中のどこの誰が必要としているかで、おのずと価格は決まってくるだろうという視点で妄想してみる。

WAWを一般人はさすがに乗用しないだろう。普通の家庭には、ガーデニングにパワーショベル、庭先の雪かきにホイールローダが必要ないのと同じように、ヴァンツァーは日々の暮らしで使うには手に余るので持つ必要性がない。無論、置き場所やメンテナンスの問題もある。ということは、準必需品の自家用車などと同じ価格帯である必要もなく、事業用と割り切って価格を高く設定できる。中型重機の価格を鑑みて、1000〜3000万円という価格帯が最低ラインではなかろうか。最低ラインと限定するのは、WAW=汎用作業機械ということから、特化用パーツでかなり値段に幅が出そうだからである。

サード序盤に登場したライラス(アリサ機)は、資材運搬・軽作業向けのフォークリフトのような役割だとしたら、ほとんどノーオプション(狭い倉庫内で動けるように最小回転半径が小さいとか、手足が伸縮するかもしれない)で事足りるだろうが、急斜面・不整地・災害現場用に多脚、極寒冷地仕様、警備用の防弾と低レベルの火器制御、消防用の耐火熱と放水装置、土木作業ならキャタピラレッグにブレードでアームにシャベルやドリル、建造現場なら多腕(2本の腕で資材を支えて、残りの腕で溶接とか)、危険地帯用の遠隔操作対応…とまあ用途にあわせたオプションを装備して、製品となるものが多いように思う。

では、肝心のWAPの値段。
「戦闘を想定しない“民間用戦車”」というものを考えてみる。キャタピラで最低限の走行(軟弱地なんか走れない)、砲塔回転、砲筒角度可動程度のを作るとすれば1000万円ほどできるだろう。前述のようにWAWの価格も最低1000万円。そして、本物の主力戦車は数億円(90式は高いが)である。この1000万:数億という値幅を考えると、ヴァンツァーも1機あたり数億円と考えてもよさそうである。戦車と違って主火器は別、WAW・WAPでデュアルユースできる部品が多くある、輸出入が活発に行われる市場、と仮定した場合、戦車より若干低い設定が現実的。

よって、最新型標準機は、ずばり3億円でどうだろう。もし、イージス・システム搭載ヴァンツァーなんてのがあれば値段は際限ない…。重ねていうが、価格の論拠となる公式資料は公開されていない。

ただ、こういったものは売価だけで判断できるものではなく、半永久機関を持つとはいえ、戦地で運用するには駆動部や外装部品は消耗するから交換が必要。アクチュエーターだけでも500個以上あるような大型機械を1人でメンテナンスできるはずもないので、1機に数人の整備チームがつくことになり、維持管理のランニングコストを考えると、いくらあればヴァンツァーを常用できるのか想像もつかない。

世界観の中心を支えるヴァンツァーであるが、ゲームの中では現実の道理から乖離した設定と揶揄されることもある。が、この価格と普及率の問題をもってフロントミッションを「悪し」と結論付ける気はさらさらない。ロイドが街で買ってるパーツは新品とは限らない。最新ヴァンツァーが3億円しても、中古の旧モデルなら数千万円くらいで買えるかもしれない。今のは下取りしてもらって高級機はリッチになってから買う。多くのゲームと同様に、設定が変だとしても、都合のよい想像で補えばいいじゃないか。