ゲーム中の会話やフォーラム、設定資料を見る限りではWAWは身近な存在のように感じるが、民間人が民間機に乗用しているシーンや描写はほとんどない。
WAWはどんな場所で、何に使われているのだろうか。
(妄想が先走ってしまったので、いろいろ間違っているかもしれません。)
土木重機との比較
WAWは汎用作業機として四肢を持つため、「重機のパワフルさ」と「人間のような動作の広範さ」を合わせた優れた作業用機械と見ることができる。しかしながら、直立歩行あるいはそれに準じた移動方式で、機械の高さや運動特性などに制約が生じる。なにより汎用機であることが、一般の重機の特徴である「専門性」と相反することも多い。特に専用機として設計された重作業機械には適わない。現状ある作業機械の充実ぶりを見ると、WAWが入り込む余地があるのだろうか。
たとえば、多量の土ぼこりが舞うような現場を想定している建機は、運転席の室内空気圧を高めに保ち、外界からほこりが入りにくくしてある。すべてのWAWにこういう加圧機能は必須ではないから、これをWAWでまねしようとすると、ほかのWAWには必要ではない「機密性の高いコクピットを備えた機体」を設計しなければならなくなる。
各パーツにしても、トロー社のオテルのようにブレードがついた履帯タイプのレッグであれば、ブルドーザやロードブレーカーの排土・運土と同様の作業が行えるのは確かだが、機体バランスを考えると大きなブレードをつけることはできないし、大きなバスケットではアームの動作の邪魔になってしまう。
また、そのアームにシャベルを取り付けても、大きなバスケットを備え機敏に旋回し、土砂を積んでいく油圧ショベルのスピードには及ばない。さらに油圧ショベルはアーム先端のアタッチメントを交換することによってものを掴むことも、コンクリートや岩石を粉砕することもできる。
WAWが腕に重いものを持てば機体の重量バランスが著しく崩れる。よって、重量のあるものを荷役したりすることを想定して、車輌の重心を意識し、燃料の増減で重心が変化しないような設計にする必要がある。
ネガティブな文脈になってしまったので「WAWは役に立たない?」というイメージが先行してしまったかもしれない。だが、少しシチュエーションを限定していくとやや事情が異なってくる。
WAW活躍の場
自動車の解体で専用のアタッチメントを装着した油圧ショベルを使うことがある。廃車のディファレンシャル・シャフトを切断したり、エンジンやラジエーターを引っ張り出したりする作業は、WAWでもできそうである。しかも、マニュピレーターは細かな作業も可能であるから、粗大ゴミや電化製品の解体にも力を発揮する。無論、廃棄されたWAWの解体にも使えるし、WAWやWAPのパーツの交換やアセンブルなどの保守メンテ作業にも有用だろう。
林業などでは作業場は傾斜地が非常に多く、平地での行動を前提とした機械では都合が悪い。現在主流のハーベスタやプロセッサなどの林業機械は履帯タイプが多く、傾斜不正地での行き来が難しいことも多い。そんな足場の悪い場所でも、多脚WAWの姿勢制御機構をもってすれば、急傾斜地でも安定した作業を行うことができよう。
また、重労働といわれる下草刈時でも、地面の凹凸に合わせて草刈機内蔵アームがセミオートで作業することはできないだろうか。
屋内作業
重機も屋外だけでなく、ときに地下坑内や建物内で作業を要求されることがある。つまり換気が悪いので排気ガスを大量に出すのでは具合が悪い。半永久機関を持つWAWの出番ではないだろうか。
また、建屋の中ではスペースが限られるので、何でもかんでも車輌が導入できるわけではなく、小型の機械に頼らざるを得ないこともある。入り口が小さいが内部は広いといった場合、パーツに分けて搬入し、中で組み立てるのもWAWなら容易だ。
もっとも、WAWも多少は特化があった方が都合がよいだろう。
例としては、狭い空間で人と一緒に作業するので転回旋回する際に警報ブザーで注意を促す(車の「バックします」のような)とか、地上の開口部から地下へ下ろすための吊り下げ用ハードポイントなどである。
水中作業
海でも毒ガスでも大気圏外でも「え?別に普通ですが?」なガンハザードのWAPも、リアルに考えればいろいろとやっかいだ。
水密構造にすることは当然としても、耐海水性・耐食性も十分でなければならないし、水密区域の内圧を外部の水圧に応じて変える必要もあるかもしれない。もちろん、放熱に空冷は使えない。
動作についても、陸上とは違って浮力がかかるので、歩行パターンは陸用のものとは別のソフトウェアが必要になるだろうし、履帯であっても陸上と同じ出力ではシュースリップ(ホイールスピーン)してしまうから、馬力を落とすなどの対策が必要と思われる。
総括
流れ作業などラインの一部にWAWが組み込まれた場合を考えてみる。
例えばコンベアで次々と荷物が運ばれて来て、それをトラックに荷役する作業を行うWAWが何かトラブルを起こすと、トラックは出発できず、コンベアの前過程作業も止めざるを得ない。スケジュール遅延は経済的な損失にもつながってしまう。そういった意味でもWAWは民間用といえ安定性・信頼性・耐久性に優れなければならないから、高価なものとして考えるのが妥当であろう。
重機もWAWも用途が特殊であるから需要は多くはない。しかし、WAWには軍用WAPと共用されるデュアルユースのユニットが用いられ製造コストが抑えられている(という設定)。また、作業用途が異なってもボディは共通であるし、必要なパーツ(アタッチメント)を用途に応じて交換すれば事足りるという、汎用性を持つので、さまざまシチュエーションの現場で共用できるという強みを持つ。また、共通規格があるから整備性も高いし、国内外問わずに様々なパーツを試すことができ、劣化・故障してもパーツ・部品の調達・交換が容易である。
WAW誕生・普及後もきっと油圧ショベルカーやフォークリフトは使われ続けていくだろう。でも、それらは作業機械の中ではメジャーな存在で、水中ブルドーザー(日本に10数台しかないらしい)など一般人がほとんど目にすることもないマシンもある。21世紀末、WAWはきっと、後者のように目に触れる機会は少ないが、なくてはならない作業機械の地位を占め活躍しているだろう。
追記
テンダスって民間人のフレデリックやモーリーが乗っていたこともあって、もっとWAW(非軍用)寄りな印象だったんですが、FMOでは特殊な存在とはいえしっかりと軍用兵器として登場しちゃてます。軍用機としてではなく、あくまで民間機という位置づけでWAW界のウニモグとかそういうノリが欲しかったなあと思ってます。
|